よく冷えて静かなPWMファンを探す
今日は鳥の鳴き声に悩まされました。かえるのクーの助手の「井戸中 聖」です。
使いまわしている80mmファンが軸鳴りしてきたり、老朽化してきたので取り換えます。最近のマザーボードはだいたいケースファンをPWM制御(直流を可変長の矩形波形で流し、モータなどの回転数を制御するやつ)できるので、PWMファンを導入します。
大き目のケースであれば、局所的な冷却は/80mmのファンを配置することにより、よりよいエアーフローを「静かに」つくれます。静音にこだわっているからこそのPWM ファン導入でもあります。比較的入手が容易でメジャーな8cm/80mmPWMファン(いずれも25mm厚)を比較します!
頑張って、クー冷しましょう。
基本性能の比較
ブラウザによっては、はみ出ます。ご容赦ください。
画像 | ||||||
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メーカ | ARCTIC | GELID |
be quiet! |
ENERMAX | SANYO | noctua |
型番(製品名) | F8 PWM |
Silent8 |
PURE |
T.B. SiLENCE |
San Cooler |
NF-A8 PRM |
おおよその |
900 | 970 |
1,400- |
980 - |
1,600 |
1,800- |
電源(A) | 0.09A | 0.13A | 0.14A | 0.25A | 0.16A | 0.08A |
回転数範囲 |
300 - |
900 - |
- |
500 - |
800 - |
- |
最大風量(CFM) | 31 | 27 | 26.3 | 35.1 | 42.4 | 32.6 |
最大風量 |
31.9 | 24.8 | 11.9 | 26.8 | 44.6 | 29.7 |
ケーブル長(cm) | 41.0 | 50.0 | 46.0 | 50.0 | 59.5 |
20.0 |
騒音(メーカ) | - | 21.5dB | 19.2dB | - | 34dB | 17.7dB |
騒音(実測) |
12.9dB | 8.3dB | 2.3dB | 13.2dB | 7.2dB | 8.9dB |
振動(実測) |
14.4dB | 19.9dB | 10.2dB | 13.0dB | 22.1dB | 20.6dB |
付属品 | ネジ |
固定用 |
ネジ |
ネジ |
ネジ |
ネジ |
実測結果について
風量と、騒音について、実測測定したのでレポートします。
風量計測について
最初は大きなポリ袋をいっぱいに送風するまでの時間を計測しようと思っていましたが、思いのほか手間がかかったので、古い軽く回る8cmファンを送風で密接回転させ、その電圧を測定することにしました。1600-2000回転くらいでは、ほぼリニアになるという想定と、各メーカの公称値の平均(大きくはずれた公称値は除く)の風量をもとに、計測電圧の換算値をあてた、簡易実測(相対的な概算値)です。正確ではありませんが、上記ファンの風量の相対性能を測るには十分だと思います。
(上記方法による実測に基づく風量推定値)
騒音計測について
心なごむ春鳥のさえずりも今日ばかりはノイズでした。
本来は防音室で行わないといけないですが、なんちゃって計測なので、生活雑音を気にせず部屋で録音して、直後にファンなしの音を録音して差のデシベル値をとりました。
1,000円のダイナミックマイクなので性能がとても悪いため、測定規格を無視して(本来は1m離して計測)ゲインをめいっぱいあげて至近距離で録音し、ツールでファンなし録音とのデシベル差を求めました。比較のため、2,000回転にあわせて計測します。それでも生活ノイズやゲインノイズに埋もれて、メーカ表示値よりもかなり小さな値となっています。
デシベル計測だけでなく、聴覚上の周波数特性によりかなり聞こえ方が違います。なので、ノイズ音の周波数特性も解析します。
(メジャーは測定時には置いていません)
振動計測
マイクをファンを置いたのと同じパネルに直置きして、主に振動音を拾いました。
実際に自作すると振動のほうが気になることがしばしばあります。
これも、ノイズ音の周波数特異性を解析します。
共通事項:発生する音について
・今回測定では、1分間に2000回転するので、2000rpm/60sec=33.3Hzの回転の基音が発生します。基音の2倍、3倍...の音も発生します。
・モータはブラシレスで(回してみればわかりますが)4か所停止しやす場所があるので、33.3×4=133.3Hzのモータ音が発生します。
またこの2倍音の266.7Hzの音も比較的発生します。モータ音の割合が多いものは振動も多いと思ってよいです。
・羽の数×33.3Hzの風切り音が発生します。7枚羽なら233.3Hzの音が比較的大きく発生します。(9枚羽なら約300Hz)
・高い倍音が発生する場合は、モータやベアリングの遊びがおおきかったり、がたつきがあると思われ、あまり良い製品とはいえません。
・回転運動するので、音は必ずある程度発生しますが、構造(剛性)などによりその周波数特性をコントロールすることが可能です。
各製品の騒音値・振動値と周波数特性
回転基音は緑●、その2倍音は▼
モータ基音は赤●、その2倍音は▼
風切り基音は青●、その2倍音は▼ にてマークしました。
冗長ですがペタペタ貼っていきます。上側が実測騒音、下側が実測振動です。(騒音dB/振動dB)。実測といっても測定規格の方法で計測できていないので、ここでの相対的な数字と考えてください)
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事件発生!!
PCのPWM機能を頻繁に設定しなおしていたせいなのか、はたまた、電源をつけたまま!ファンを付け替えたのが悪かったのか。。。
PCの使用ポートのPWM機能がお亡くなりになり、常にフルパワーとなってしまいました。
CPUのPWM機能もNGになり常にフル回転でうるさくてしかたないです。
幸い、CPUの補助ファン(水冷用途など)のPWMは死んでいませんでした。
BIOSのCMOSクリアもBIOS自体の入れ替えも行ってみましたが、現象がかわりませんでした。
においもなく、コンデンサがはじけている様子もありませんが、ハード(一部)故障を疑っています。
ああ、買って半年たってないのに。。。(涙)
測定途中でおかしくなったので、別コネクタで再測定しました。
感想
ARCTIC F8 PWM
一番期待していなかったが、予想外のダークホース。総合的に一番よい感じです。
他は羽7枚が多いですが、これは羽9枚です。羽の角度もきついので、風切り音はかなりあると思っていましたが、予想に反して(dB値ではそこそこ計測されるものの)視聴上の音の大きさは2番目に小さかったです。回転数に対する風量は一番良いです。
最初の8秒は騒音、次の8秒が振動音、その次の8秒が比較用のファン回転なし音(無音)です。マイクの性能が悪すぎるのですがご容赦ください。なお、音がちいさすぎてそのままでは聞き取れないので、SoundCloudにアップするときに32dB増幅しています。(以降同様)
GELID Silent8 PWM
風量が少しだけ落ちる割には、モータ音がうるさく感じられます。中庸な感じがしますが自分の用途では積極的に選択する理由がありません。このメーカは以前から使用していますが、比較的軸鳴りが発生しやすい「気」がします。
be quiet!PURE WING 2
一番静かで、動いているの?というほど静音です。風量は他から比べ少ないので、冷却の観点からはオススメしません。やんわり静かに冷却できればよいのであれば、選択肢になります。スペック上は風量は26.3CFMありますが、実測ではかなり低い値でした。
ENERMAX T.B.SiLENCE
回転数あたりの風量は少なめですが、その分静音です。バランスはいいと思います。
個人的にはフレーム横のスリット以外は好きなメーカですが、スリットからはそれほど風が漏れていないことがわかりました。モータ音も静かで、振動も少ないです。高音のノイズがありますが、実際には増幅しなければわからない程度のものです。敏感な方は気にされるかもしれません。
SANYO San Cooler 80 PWM
高速から低速まで、きわめて安定して動作し、また、風量も確かにあります。スペック上の騒音も計測では普通程度なのですが、モータ動作音がとても大きく感じられ、振動も一番大きいかったです。モータを強力にすれば、安定してまわりますが、反面動作音はどうしても大きくなります。安定して動作をさせたい場合、多少の音はカバーできる場合は選択肢となるでしょう。個人的には(音以外は)一番信頼のおけるメーカです。価格は高めですが、高いだけのことはあると感じさせるアイテムです。
noctua NF-A8 PRM
noctuaは昨年初めてCPUクーラとして使い始めました。とてもよい印象があります。作りがとてもしっかりしています。計測では振動がそれなりにありますが、気にならない音です。コーナーのラバーがいい感じなのかもしれません。高いだけあってパッケージングも手抜きがなくまた、防振対策は一番よいと思います。低回転でも安定して風量があるので、バランス的にはこの製品が一番よいと感じます。あとは、価格的にどう評価するかが分かれ目です。なお、12cm製品のネット評価は最強と思われます。でも高いよねぇ。。。
まとめ
低価格の魅力と1600prm以上で使うなら他よりも風量があること。モータ音が気にならないこと。静音タイプにしては電力消費が抑えられていること(静音タイプはモータを比較的弱くして音をおさえ、仕事効率が悪い点を電力で補う傾向にあるので、優れていると思う)。最大パワーでは、SANYOの次に風力がでます。風切り音は大き目だが風量を考えると十分納得できることから、トップ予想のnoctuaを抑え、「ARCTIC F8 PWM」が堂々の1位を獲得しました。
ここに クーアワード2020 「8cmPWMファン部門」 金賞を授与いたします。
おめでとうございました。
次点は、「noctua NF-A8 PRM」です。主に1,500回転以下で超静音動作させるならこちらの方がおすすめです。
エディターズチョイスは、「ENARMAX T.B.SiLENCE」です。フレーム周りのスリットを嫌う人は多いようですが、コストパフォーマンスは高く、分解掃除できるのも大きなメリットです。計測上は騒音が高くでていますが、実際の聴覚ではSANYOのSan Coolerよりもずっと静かに聞こえました。
SANYOクーラは風量では申し分ないのですが、振動に難点があったので(高回転までできるモータのため2000rpmでの比較はもともと難がありますが)選外となってしまいました。
参考文献
ブラシレスファンが回るしくみ(BGMがあれですが、内容はこれです)
ファンの概要と特徴(PDF)
(追加)クーにファンの音を渡して、SoundCloudにアップしてもらいました。